樹木医 松井裕之
大切に育ててきた松を「どうしても移動しなければならない」。
そんな時、誰もが心配するのが “移植で枯れてしまわないか” という不安です。
特に松は繊細で、根を切る移植作業には大きなリスクが伴います。
あるお爺さんから、一本の松についてご相談をいただきました。
小さなころからずっと見守ってきた、大切な松。
しかし事情があり、どうしても場所を移さなければならなくなりました。
「切るなんて、とてもできない」
そのお気持ちは痛いほど分かります。
だからこそ今回は、松の命を守りながら移すための“根回し”から始めています。
⚠️ 移植には常にリスクがある
木を移すということは、どうしても根を切らなければなりません。
根は水の入口であり、木の生命線です。
移植とはすなわち、
木にとっての水の入口を失わせる行為
と言っても過言ではありません。
だからこそ、移植後は水不足で枯れやすくなります。
特に松は繊細で、無理な移植は命取りになります。
🛠️ だからこそ「根回し」が必要
移植を安全に行うための準備、それが「根回し」です。
一度にすべての根を切ると、木は耐えられません。
そこで、事前に半分ずつ根を切り、切り口から新しい細根が再生するのを待ちます。

今回の計画は三段階です。
1年目:半円の根を切る(根回し①)
2年目:残り半円の根を切る(根回し②)
3年目:底の根を切り、いよいよ移植本番
三年がかりの作業ですが、
「命を守る移植」にはこれが最も安全な方法です。
🌱 根が再生しやすい環境づくり
根回し後は、切り口から新しい根が出ることが何より重要です。
そのため、埋め戻しの土壌にもこだわりました。
今回は、
炭をブレンドした通気性・保水性の高い土壌
で埋め戻しています。

炭は微生物環境を整え、根の再生を助ける効果があります。
📅 来年はいよいよ最終段階へ
来年は底根を切り、いよいよ移植の本番です。
長い準備期間を経て、松が新しい場所でも元気に生きられるよう、最後まで丁寧に進めていきます。
樹木医のHP⇒http://www.matui-jyumokui.com/
